【特集】萩の肉 「みどりや」代表取締役 藤井輝雄さん

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過去に囚われずに未来から今を考える「みどりや」

萩市が、世界に誇る日本の在来牛「見島牛(みしまうし)」と、見島牛とホルスタインを交配させて誕生した「見蘭牛(けんらんぎゅう)」。先祖が残してくれた宝を、未来に繋ぐため、畜産・加工・販売までの全てに関わることで、無駄を無くし安心安全な牛肉を提供し続ける「みどりや」。今回は(有)萩見蘭牧場 代表取締役 藤井輝雄さんにお話をお伺いしました。

ご出身はどちらになりますか?

萩市で生まれ育ち、日本大学畜産部に進学してから伊藤ハム(株)に就職しました。その後、山口県内の配合飼料メーカーで働いてから、萩市に戻り家業を手伝いました。子供の頃から、いずれは畜産や肉の商売の仕事をやるんだろうなと思っていました。

「みどりや」の創業はいつですか?

創業は昭和31年。最初は肉屋でした。そこから牛を飼い始めたり、飲食の仕事を始めたりと、事業を拡大展開していきました。創業者である父が早くに亡くなったので、母が社長になりその後を引き継ぎました。

「みどりや」の由来を教えてください。

昔は田町商店街に店舗があり、「田町会館」という社名だったのですが、それが無くなるタイミングで社名は「みどりや」になりました。でも、どうしてその名前になったのかは分からないんです。

現在の会社や店舗のデザインがとても洗練されていますが、自社で考えられましたか?

デザインは、萩市のシンボルマークもデザインしている礒部デザイン事務所の代表・礒部司氏にお願いしました。20年以上前のことになりますが。

「みどりや」が心がけていることを教えてください。

お客様に見えるような形で、安心安全をお届けするために、生産から加工・販売までを全て「みどりや」で行っていきたいと思っています。生産部門にあたる畜産として、萩木間畜産団地の中に萩見蘭牧場を作りました。しかし、その事業を始めるにあたり、株式会社では農地の取得ができないことなど様々な課題が生じたため、やむなく新たに有限会社を作ることになりました。その後も、様々な課題を乗り越えながら、今の事業の形が出来上がりました。事業では、未来思考(みらいしこう)をモットーに考えています。未来志向の「志向」ではなく「思考」です。思考にした理由は、「未来から今を見つめて何をしないといけないか」を常に考えるべきだと思っているからです。難しく聞こえるかもしれませんが、例えば1週間後にイベントやることにした場合、1週間後にお客さんが喜んでくれることを、今考えなければならないことと同じです。そういうことを、いつもイメージしながら取り組んでいこうとしています。会社としてではなく、個人で心がけて取り組むようにしています。

萩見蘭牧場の従業員はどれくらいいらっしゃいますか?

従業員数は牛の管理3名・精肉加工2名・合計5名です。朝は7時くらいからです。肥育している見蘭牛は約300頭で、毎週10頭程度出荷しています。見島牛は現在は40頭くらいいて、年に5、6頭出荷しています。レストランや個人のお客様に届けていますが、そのほとんどが、東京など都市部のお客様なので、地元にはあまり出ていませんが、盆正月には店舗で販売しています。今年も6月末に販売を予定しています。できたら、毎月1頭はお客様に安定供給できるようにしていきたいと思っています。そのためには見島牛の飼育農家の後継者問題や、環境とか様々な課題をクリアしていかないといけません。萩市が見島に共同牛舎を新設する際に「100頭くらい飼育できるような広さが必要です。」とお願いしましたが、叶いませんでした。

見蘭牛の肥育について教えてください。

見蘭牛は、県内の酪農家に種をつけてもらい、生まれた子牛を1週間で引き取っています。出荷までは24か月です。引き取ってから2か月間はミルクを与えるのですが、係の人を親と思うようで後を追ったりします。この時期は毎日体温を測ったり、糞の状態を記録して、徹底的に健康管理をしながらスキンシップをして、しっかりと人に慣れさせることも大切です。

見蘭牛の特徴を教えてください。

まずは見島牛の肥育の特徴から話すと、見島牛は餌を10kg与えて1キkg太るのですが、体が小型なので食も細く、餌を10kg与えても5kg食べれば良いほうなんです。どうしても肥育期間が長くなり、病気や事故になる確率も上がるため管理が大変です。さらに天然記念物でもある見島牛は出荷数も少ないため、「肉質を重視し、肉量も増やす」のテーマで、見島牛(父親)とホルスタイン(母親)を交配させ、それぞれの品種の長所を生かした新肉用牛を作る研究を、昭和48年に名古屋大学の富田教授がスタートさせました。6年後の昭和54年に交配に成功し、見蘭牛の1号が誕生しました。名前は、見島の見とホルスタインの原産地のオランダの蘭から名前をつけました。今は、見蘭牛(けんらんぎゅう)と間違えられずに呼ばれますけど、初めはどう読むかを説明しないといけませんでした。

 

見島牛について教えてください。

昔は、見島でも家畜市場・子牛市場があったので、いろいろな畜産業者が見島に行って買えていました。一般家庭でも農耕用で利用されていたので、島内に700~800頭くらいはいたと思います。それが、機械化により、役用の役割もなくなり、どんどん少なくなりました。市場もなくなり、飼う人も少なくなって。今は、保存会が保護活動をして守っています。

 

 

見島牛は、生後どのくらいで見蘭牧場に来るのですか?

見島牛は、生後10か月の雄子牛が主ですが、稀に繁殖力の無い雌牛をこちらに移動させます。文化財保護課と話をして経済牛として育成する了解を得ているので、見島から出ると天然記念物では無くなります。生後10か月でこちらに来た子牛は体高が約130cm、体重600kgになるまで肥育します。そこまでになるのに大体3年以上かかります。それでも黒毛和種の平均は1t近くなるので、それに比べると在来種は小型です。見島牛は2か月に1度体側をして健康管理をしています。牛の健康状態を管理する意味もありますが、人の手で触ることで牛が安心して牧場で過ごせることに繋がってもいます。

見島牛の特徴を教えて下さい。

県の農林技術センターで脂の性質を調べてもらったところ、融点は一番低い結果で16℃でした。オレイン酸含有量が最高値63%で、平均50%以上の結果が得られています。これは特別な肥料など飼育環境でつくりだした結果ではなく、本来見島牛が持っている特徴です。分かりやすく普段使用されている油で例えると、オレイン酸が主成分のオリーブオイルと同等の健康効果があると言うことです。酸化に強く、コレステロール値上昇防止、活性酸素の生成を抑えると言われています。常温で溶け出す脂で血液サラサラになります。このように数字で見ると、より質の良さが分かると思います。これからも分かりやすいようにデータを増やして、お客様にお伝えしていきたいと思っています。東京で毎月行われる肉学会で見島牛の話をさせて頂いたこともあります。都市部のお客様からは「見島牛を見島で見たい」と良く言われますのでお連れしますが、その時に見島牛を召し上がられて「見島の潮風にあたって牧草を食べて育った牛」の味がすると、感想を言われました。見島牛は素材の味を味わって頂きたいので、一口目は何もつけずそのまま召し上がって頂きたいと思います。

精肉加工品について教えて下さい。

牛肉は熱を加えると、色味が黒っぽくなり見た目が悪くなるところから加工品にはあまり向かないと言われています。それで豚肉が使われますが、いろいろ工夫をして見蘭牛を使用したソーセージや、見島牛を250g使用したソーセージを作っています。どちらもカットするとサイコロ状の肉片が見えるように、美味しそうな見た目にも工夫しています。

お客様にお伝えしたいことは、どんなことですか?

みどりやでは、牧場直送で安心安全を食べて感じてもらえるように、いつも鮮度の良いものを提供できるように心がけています。ロースはローストビーフというように、お肉の部位毎で素材を美味しく食べられる調理法が大切です。ハラミは一般的には繊維を縦に切って柔らかくしますが、ブロックで繊維を崩さないように縦に切って食べると、肉汁を口の中で凄く感じられます。カットの仕方で肉の美味しさが変わります。どうか、食品ロスにならないように、無駄がでないような買い方をして、全てを美味しく食べていただきたいと思っています。レストランもコロナ対応をしっかりとしているので、安心してお越しいただきたいです。これからは焼肉のシーズン、冬はすき焼きやしゃぶしゃぶと、季節によって食べ方が異なりますが、それぞれにあった美味しい部位を上手に食べていただきたいです。

子供たちに伝えたいことはありますか?

萩市東、西中学校や長門市の日置農業高校は、体験学習に来ています。学習内容は、保育の管理から餌やり・出荷の手入れなどを、一通り全部やってもらっています。子どもたちには、見島には日本在来牛のルーツといわれている貴重な見島牛がいて、その先祖の宝が絶えないように守り続けている人がいることを知って欲しい。実際に見て、それに共感して、将来頑張りたいという人が育って欲しいですね。

これから挑戦したいことはありますか?

これから新しく規模拡大などよりも、引き継ぐ者が安心できるようにしたいと思っています。海外への販路は「外国の輸出規定に対応できるか?」「規格に合うか?」他には「宗教のこと」等がクリアすればできると思います。でも、日本でもまだまだ「見島牛」「見蘭牛」を知らない人が多いので、まずは国内での認知度をもっと上げていきたいです。

レストランのメニューなどを教えてください。

みどりやのレストランは、「網焼きレストラン見蘭」、「ダイニング玄」とBBQできるスペースがあります。BBQスペースは、コロナの終息を待って再開予定です。見蘭牛はレストランでもBBQでも食べることができます。BBQスペースは店舗購入した肉をそのまま原価で食べられることが売りですが、「せっかく来ても楽しめない」という主婦の意見から、手ぶらで来ても大丈夫なセットメニューも用意してあります。

「網焼きレストラン見蘭」は主に焼肉が食べられ見蘭牛をはじめよりすぐった牛肉を使って提供しています。見島牛はご用意できればご提供させて頂いています。「ダイニング玄」の人気メニューは見蘭牛のハンバーグです。他にステーキ丼もあります。土日には、数量限定ですが見島牛を使ったハンバーグを出していますよ。

◇天然記念物指定 日本在来牛のルーツ 見島牛(みしまうし)◇

 

見島牛とは

日本の牛は、弥生時代から稲作と共にアジア大陸から朝鮮半島を経て、九州や中国地方に上陸したと言われています。「見島牛」は、萩・見島が日本海に浮かぶ小さな孤島であったために、多品種と交わることなく「日本在来牛」の純血と原型を保ち続けています。原型に近いこと、姿を保持していることから、在来牛のルーツと言われ、見島で飼育されている見島牛は極めて貴重な牛として昭和3年に「国の天然記念物」に指定されました。在来牛のルーツと言われる見島牛は昔ながらの日本在来牛の風味と旨味を凝縮させた濃厚な味です。

年表

1928年   日本で唯一の純粋種として「国の天然記念物」に産地指定。

1932年   最盛期には約700頭が飼育。年に1回の子牛市場も開催。

1962年   農業の機械化により役用牛としての地位を失い頭数が減少。

「見島牛保存会が発足」増頭に取り組む。

1974年   31頭にまで頭数が減少。

2005年   90頭まで頭数が増加。

 

 

〇見島牛は山口県萩市にある「みどりや」だけで生産・販売しています。

 

ミートマーケット ミドリヤ本店

+Photos+ 萩市地域おこし協力隊 上田 晃司