萩のつくり手 <第22回>
「あんの園芸」阿武 択磨(あんの たくま)さん

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萩市福栄(ふくえ)地域は、昔から花卉(かき)栽培が盛んで、「福栄といえばシクラメン」と言われるほどの県内有数の産地。シクラメンの出荷がピークを迎える12月はじめには、毎年「道の駅ハピネスふくえ」でシクラメンフェアが開催されます。「ハピネスふくえ」からすぐ近くに建つ「あんの園芸」の施設で、2代目となる阿武 択磨さんにお話を伺いました。
※花卉栽培・・・観賞用の植物を栽培する農業のこと。

 

-出身はどちらですか? どのような子ども時代を過ごされたのでしょう?

福栄です。きょうだいは、姉が2人いますので、末っ子長男です。小さいころから生き物が大好きで、事業所の近くの川で、カワムツ、ドジョウ、アユなどの魚をとったりして自然の中で育ちました。小さいころからかなり集中力はある方で、何に対してものめり込んだら止まらなくなる性格でした。

福川小(現在は福栄小に統合)、福栄中に通い、高校は萩高校理数科に進学しました。生き物が好きだったので、高校でも生物の授業が一番楽しかったです。高校卒業後は広島大学へ進学しました。主に遺伝子学を専攻し、大学院の修士課程まで進みました。当時はやっていたPCR法を用いて生き物の遺伝子の違いを調べ、氷河期と温暖期の長い繰り返し期間をかけて原種からどのように生き物が遺伝子を変化させたのかを研究し、新種の昆虫の発見に没頭しました。部活は、中学、高校、大学と陸上の中距離をやってました。

 

-修士課程修了後は、どのような道に進まれたのですか?

機械を販売する商社へ就職しました。いずれは親の事業を継ぐという思いはありましたが、社会経験がない状態では成功する自信がなくて。一度、外の世界で修行と思い、それも厳しい環境に身を置くために営業の職に就きました。大学院卒で、新卒入社が24歳の時でしたので、30歳までには一人前の社会人にならなければと思って毎日必死でした。

 

−商社では、どんな仕事をされていたのでしょうか?

原子力発電所で扱う機械(バルブ、ポンプ、ギアなど)の販売やメンテナンス対応などを主に担当する部署に配属され、入社後の配属先は神戸、3年目に北九州に転勤し九州で1つの商権のある仕事を任せてもらいました。

何千台もある既設機械のトラブルは日常茶飯事で、特殊なオーダーメイド部品の納期と価格の調整から定期検査のメンテナンス計画と現場対応などありとあらゆる仕事をしました。本当に毎日日付が変わるまで仕事をしていたので大変なことの連続できつかったですが、やりがいのある仕事でしたし、3年で当初の想定利益の3倍まで伸ばすことができたので、前の会社にはしっかり貢献できたとは思います。でも、5年したら地元に戻って家業を継ぎたいと思っていました。結果、コロナと仕事の引継ぎに10カ月を要したことでちょうど30の歳で萩に帰ることになりました。

 

−帰郷した時の萩の印象は?

帰省のたびに感じていたことですが、Uターンして萩に再び住むと、なじみのお店が閉店していて、人口減をひしひしと感じました。特に感じるのは「地域に若者がいない」ということ。これでいいのだろうか?という危機感もあり、萩青年会議所(JC)に友人の誘いで入ることにしました。まだまだ知識も経験も不十分ですが、青年会議所は40歳までと期限付きなのでそれまでにしっかり学びつくすこと、ゆくゆくは萩市がいい方向に向かっていけるような先駆けの事業をし、地域に貢献できたらと思います。

 

−「あんの園芸」創業の経緯は?

この場所に施設ができたのは、平成7(1995)年、私が5歳の時です。旧福栄村の事業で、大規模な施設を立てることになり、3軒の農家が手を挙げてスタートしました。それまでは福栄の別の集落でシクラメンなどの花を作っていました。父には、独自に培った栽培技術があり、花の苗をコンパクトによく咲かせる技術、多くの花を均一に育てて花を咲かせる技術、花屋さんの店頭でも花が長持ちするように頑丈につくるノウハウなどがあります。また、ゼラニュームなどの特異性のある花も新たに生み出しその花の文化を築けたこと、西日本全域に拡販できる各県の中央市場との関係を築けたことで、経営的にうまくいったところがあります。

花作りはあくまで農業ですが、季節を通して同じ製品をつくるという点で、私はメーカー的な考えが必要だと思います。自然の力を使うので再現性を求めるのがかなり難しい花作りのメーカーです。メーカーは製品の製造技術が何よりも一番大切だと思います。

 

 

−生産している産品についての特徴・こだわりを教えてください。

生産しているのは、ガーデニングで使う花のポット苗です。花屋さんの損失にならないように、店頭で全部売り切れる品質の花をつくることを心掛けてます。あとは、量をつくることで価格原価が抑えられているところもあります。

シーズンを通して安定供給できるように、1~3週間おきに植え付けをし、数か月後に出荷させるなどの工夫もしています。例えば、ゼラニュームであれば年間を通して種を18万粒ほどまいてますが、それを1年間で21回に分けてます。花の苗は1年で70万ポット程度を出荷しており、シクラメン鉢物も3000鉢ほどつくってます。

 

−スケジュール管理はどのようにしているのでしょうか?

年間50種類くらいの花をつくってますが、植物には適正温度や光の量など最適な条件の違いがあるので、施設の中をどのように采配するかが大切になります。以前はざっくりとした計画で生産してましたが、施設の中にもったいないなと思う空きスペースがあるなと感じていました。
私は大学と商社時代からパソコンのExcelが得意でしたので、生産のシュミレーションを細部に至るまで行って施設に空きがないように計画をしました。その結果、種をまいたけど施設に空きがない………といったようなロスや無駄な労力をなくすことができました。

 

―仕事の1日の流れはどのような感じですか?

朝、7時半に施設に来て、午前中は水やりです。全て手潅水(かんすい)で、施設も大きいので長い時には父と2人で半日かかります。それに加えて春と秋は出荷が大量にありますので、従業員と一緒に花の枯れ葉をとってきれいにしたり、花の色で配列を組みなおしたりして花屋さんの店頭でよく売れる状態にしていきます。ぱっと見で綺麗って思ってもらえる工夫、配色はグラデーションよりコントラストを意識するなどの工夫も忘れません。
※潅水・・・草木や農植物に水を注ぎかけること。

 

―年間の流れはどのような感じですか?

春と秋の出荷シーズンは、週に3,4日は、自分で中型のトラックを運転して、徳山や北九州まで出荷にいきます。それに加えて、月、水、金曜日に運送会社の集荷もありますので、西日本全域に花を発送してます。夏は暑すぎて花が売れないので、出荷はないですが、冬は暖房設備をつかって花を開花させて出荷をします。
それと、月に1回「はぎマルシェ」に参加してます。せっかくこれだけ花をつくっているので、萩の方々には品質の良い安価な花を提供したいなと思っての取り組みです。マルシェでガーデニングが好きな方とマニアックな話をしたり、顔を覚えてもらえるのがうれしいです。

 

―どういうときにやりがいを感じますか?

自然相手の仕事で、自然をコントロールすることは不可能です。そんななかでも、計画通りに花を咲かせることができたり、イメージ通りのフォルムで花をつくることができたときに喜びがあります。まだまだ3年目なので、常に父の考えを確認しながらですが。あとは、出荷後、施設の中がすっからかんになったときには、数カ月もかかったけどよく旅立ってくれたなと達成感があります。

 

―大変なところは何ですか?

自然との調和といいますか、害虫とのいたちごっこですね。昆虫も遺伝子を変異させて農薬耐性をもったやつが次から次にでてきますので、常に農薬のローテーションを組んで対応してます。農薬は強すぎると逆に薬害で花が傷んだりもするので、絶妙な濃度を模索してます。

 

―儲かる農業の秘訣とは?

何でもそうですが、儲かるシステムを組んで、しっかりロスなく計画して、自分の想定した通りに完璧に実行できたらうまくいくと思います。1つのベンチに何個の花がつくれるか、種からの発芽率、成育過程のロス率、出荷期限とか、ありとあらゆる定量的なデータから動きをシュミレーションして極力不測の事態を無くすようにしてます。まだまだ完璧なシュミレーションは組めてないですが、記録をたくさんとって、計画を毎年ブラッシュアップしていつかは完璧な年間計画を立てたいと思ってます。

 

−これからチャレンジしてみたいことは何ですか?

先ずは、組織体制をつくることです。会社をつくるだけなら簡単ですが、働く従業員も無理なく、楽しく、長く働ける環境をつくりたいと思います。組織体制をつくるには、従業員の給与水準を上げること、福利厚生のコストもかかるので、先ずは売上が大切で年間1億は突破する必要があります。3年前に戻ってきてから毎年売上140%伸ばして、今が目標の60%くらいです。あと、地方でも農業でもしっかりやれば儲かるんだってことを証明していきたいと思います。
目標達成の為にも今は萩市倫理法人会での学びや、アチーブメントという学習教材を用いて日々勉強してます。一番重要なことで、これからもっともっと世の中から求められる阿武(あんの)ブランドの花を生み出し続けていきたいと思います。

⇒あんの園芸/Facebook

⇒あんの園芸/Instagram

 

基本情報

会社名又は個人名 あんの園芸
住所 〒758-0212 山口県萩市福井下932-3
電話番号 0838-52-0273
URL https://www.instagram.com/takuma.annoengei/
販売場所 道の駅ハピネス福栄、アトラス萩、萩ファーマーズマーケット、はぎマルシェ、各地の花屋さん、ホームセンターなど

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