萩のつくり手 <第29回>
「あわやグリーン」菅江 正勝(すがえ まさかつ)さん、美登里(みどり)さん

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美しい田園風景が広がる萩市むつみ地域・高俣(たかまた)で、2021年に「あわやグリーン」を立ち上げ、カフェ「最高の一日」をオープン。地元農家とチームを組み、ケール栽培をしています。代表の菅江 正勝さんは、東京でビルメンテナンス、石材コーティング、サニタリーなどの事業も行い、東京と萩市の二拠点で活動。取締役の美登里さんは、「あわやグリーン」のマネジメント担当です。数々の事業に情熱を注ぐ菅江さんご夫妻にお話を伺いました。

 

―出身はどちらですか?

私は島根県松江市出身で、妻は萩市むつみ地域出身です。

 

―どのような子ども時代を過ごされたのですか?

子どもの頃は、サッカー部に入り、サッカーに熱中していましたね。家は、祖父の代の昭和16年ごろから写真館を営んでいました。後に私が起業した際に付けた社名「ショーヨー」の元になっているのですが、「ショーヨー写場」という名の写真館です。私自身も写真の道へ進もうと考え、高校卒業後に修業するために東京へ出ました。

 

―写真の仕事はどれくらいされたのですか?

写真の仕事は5、6年やりました。最初はスタジオに勤めて、その後カメラマンのアシスタントになり、あまり苦労することなくとんとん拍子にデビューできました。恵まれていたと思います。人物撮影や雑誌の仕事をしていました。でも、当時は若くて、この業界が合っていないと感じ、デビューして1年くらいで辞めてしまいました。

 

―その後は、どんな仕事をされたのでしょうか?

営業の仕事に就き、浄水器の訪問販売などをやっていました。その会社は5年くらい勤めましたね。元々、起業して経営者になろうと思っていたのですが、それを視野に入れて、友人が提案してくれたビルメンテナンスの仕事に就きました。ビルの引き渡しのためのクリーニングやハウスクリーニングをする会社で、社長が海外から新しい商品を引っ張って、新しいサービスを生み出すことをしていて、そのやり方がおもしろく、勉強になりました。その後独立。ビルメンテナンスの事業で起業し「株式会社ショーヨー」を設立しました。ビルや店舗を相手に、通常のビルメンテナンスに加え、独自のコーティング手法を生み出すなどの事業を展開して24年経ちます。

 

―お二人は、どこで出会ったのですか?

20年ほど前に東京で出会いました。ビルメンテナンスの取引先店舗で働いていたことがきっかけです。

 

―むつみ地域出身の美登里さんは、どのような子ども時代を過ごされ、東京へ行かれたのでしょうか?

実家は「道の駅 うり坊の郷」の近くです。祖父母の代では、米とトマトの農家をしていて、小さい頃は農業になじみがありました。両親は農家ではなく、それぞれ公務員と電気工事士の仕事をしていました。

学校は、むつみ村が萩市に合併する前で、高俣小学校、高俣中学校(現:むつみ小学校、むつみ中学校へ統合)へ毎日歩いて通っていました。その後、萩市の高校へ進学し、卒業後は美容師の専門学校で学ぶために上京しました。1年で帰郷して地元で美容師になる約束でしたが、東京で美容師として就職しました。夫と出会ったのは美容師として働いていたときです。

 

―美登里さんがむつみに帰郷されるきっかけは何だったのでしょうか?

当時、夫はリーマンショックのあおりを受け、取引先の状況が変化していたため、サニタリーの事業を新規で立ち上げ、多忙を極めていました。実家の母が孫と過ごしたいと願っていたこともあり、2人目の出産を機に故郷で子育てすることにしました。母子で萩へ戻り、夫は二拠点生活を送る形になりました。子どもたちはむつみで育ち、現在高校生と中学生です。

 

―萩の印象はどうでしたか?

最初は都会とのギャップにビックリしたのですが、のどかな感じや空気感が大好きです。だから、若者が増えるように盛り上げたいと思っています。千石台(せんごくだい)からの萩と日本海を一望できる眺めも最高ですね。

 

―「あわやグリーン」を立ち上げるきっかけは何だったのでしょうか?

「ショーヨー」は店舗の定期的な清掃やメンテナンスを一手に受けるのが特徴で、大理石の研磨や神社の木のアクをとって新品に見えるようにするということもやっていて、その関係でサニタリー事業も始めたのです。サニタリー事業では、トイレで使うハンドソープから便座シートやクリーナー、次亜塩素酸水の消毒液などを開発していました。そしたらコロナ禍になったのです。たくさんの次亜塩素酸水の消毒液を生産する体制が必要になり、萩市むつみ地域で、障がい者が働く場として就労継続支援A型事業所「株式会社あわや」を設立することにしました。

現在12人が働いていますが、人数が増えてからは、消毒液の生産だけでなく、いろいろな種類の有機野菜を作り農業も始めました。すると、取引先の飲食店から、ケールが作れないかと相談され、ケールのことを知れば知るほど、その素晴らしさに魅せられ、本格的に作ることにしたのです。ちなみに、「あわや」は妻の旧姓です。

 

―どれくらいのケールを生産されているのですか?

週に200kgほどを出荷しています。面積でいうと、50a以上になると思います。地元むつみ地域・千石台の若手農家の方々とチームを組み、栽培を千石台の農家が行い、収穫から管理・販売・発送をあわやで行う体制を作りました。

 

―ケールはどこに出荷されていますか? 販路はどのように開拓されたのですか?

東京、大阪、福岡の飲食店が多いです。元々はビルメンテナンスで取引のあった飲食店から広がった形です。それと、東京で「アグリフードEXPO」という大きな商談会のイベントがあり、去年から出店し始めました。ケールは、まだまだ知られていないと思っていたのですが、意外に反響がありました。目標はケールが日本でもキャベツと並ぶくらいメジャーな野菜になって、「ケールといえば山口県のむつみ」と言われるようになることです。

 

―「あわやグリーン」のケールの特徴を教えてください。

ケールは栄養価が高く、スーパーフードと言われています。特にカルシウムを多く含み、ビタミンやカロテン、食物繊維など健康効果につながる栄養素がたくさんあります。特に千石台のケールは甘みがあるのが特徴です。なぜ甘いのかは、寒暖差があることが要因なのかなとチームメンバーと話しています。

 

―ケールはどのように食べるのがおすすめですか?

青汁のイメージが強いケールですが、サラダとして生で食べてもいいし、焼いても、煮てもおいしいです。お好み焼きのキャベツのかわりにケールを入れて食べるのもおすすめですよ。2024年8月10日には、カフェで「ケール祭り」をする予定なので、いろいろな料理で食べていただこうと考えています。

 

―こだわりや大切にしていることは何ですか?

「ショーヨー」でもそうなのですが、お客さまに喜んでもらうために「本物を作る」ということにこだわっています。おいしいケールを作るためには、細やかな管理が必要で、まだまだ改善の余地があると思います。大切にしていることは「人」です。仲間がいないと何もできないし、作業してくれる人がいないと前には進めないですから。

 

―1日の仕事の流れはどのような感じですか?

ケールに関しては、朝、8時から収穫を始めます。1時間半くらいで戻ってきて、洗って、検品して、発送するという感じです。

 

―一年間の流れはどのような感じですか?

年間を通して、流れはほとんど変わりません。季節によってイベントが入ります。「アグリフードEXPO」への出店や、今年は8月に「ケール祭り」もやりますし、秋には九州でポップアップストアの出店も予定しています。

 

―農業の魅力、やりがいは何ですか?

もともと第一次産業をやりたいという思いありました。ゼロから生み出し、製造から販売までを手がけたい。だから、コーティング事業でもエビデンスや保証をつけた日本初のオリジナルサービスを提供するために尽力しています。とはいえ、そう簡単にうまくいかない……というところが魅力なのだと思います。

 

―これからチャレンジしてみたいことは何ですか?

海外に向けた商品を出したいと考えています。ケールだけでなく、規格外などでロスになっている野菜を活用した商品を作れたらと。例えば「干し大根」はカルシウムも多いし料理に使いやすいですし。

それと、カフェ「最高の一日」では、メニューも増やし、土日もオープンしてバーベキューランチなどもやりたいと考えています。そのためにカフェで働きたい方を募集しているので、ご興味がある方はぜひご連絡ください。

 

ー儲かる農業、儲かる仕組みについて、教えてください。

ケールの事業を本格的に始めてまだ2年たっていないので、そのような質問に答えられる段階ではないのですが、農業は儲かると思っています。

ケールの事業では、種をまき、育苗し、生産から販売までを手がけていますが、そうすることで中間マージンがかかりません。そのためにはブランディングがポイントになると考えています。ケールのおいしさを追求するためには、下葉を取るなどの細かな管理を徹底していくこともそうですし、ロスが出ないように加工品を開発するなど6次産業化し、商品の売り方を考えていくことも大事です。商品のネーミングやパッケージデザインを作りあげていく仕事は、おもしろいですよ。

それと、儲かる仕組みとして、施設や機械設備を導入した水耕栽培なども計画していて、異常気象や天候に左右されず、安定的に大量生産できるようにしていきたいと考えています。

 

ーこれから農業を始める方へのメッセージをお願いします。

私たちと一緒に「かっこいい農業」を広めましょう!

農業は「3K(きつい、汚い、危険)」の仕事といったイメージを持つ人もいるかもしれませんが、そういったイメージを変えたいです。私が若い頃に起業したビルメンテナンスでも、当時「3Kの仕事」というイメージがありました。ですが、ビルメンテナンスの仕事の作業着をおしゃれにし、車もあえて派手なものにして、イメージを変え、若い優秀な人材を仲間に加えることができました。農業でもそうしていきたいです。

かっこいい農業の一環として、アメリカのワークウェアブランド「UNIVERSAL OVERALL(ユニバーサルオーバーオール)」の公式代理店になりました。2024810日に予定しているケール祭りでもUNIVERSAL OVERALLTシャツを販売しますのでお楽しみに。

 

貴重なお話をありがとうございました! お二人が長年培ってこられた事業でのノウハウや人脈が、萩市の一次産業を盛り上げてくれる予感がして、今後の展開にワクワクしています。がんばってください!

基本情報

会社名又は個人名 株式会社あわや
住所 〒758-0303 山口県萩市高佐下10-10
電話番号 083-888-0130
URL https://www.awaya-green.jp
販売場所 カフェ「最高の一日」、道の駅 萩往還、あわやグリーン オンラインショップ

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