萩のつくり手 <第36回>
「萩アグリ」岩山 凌(いわやま りょう)さん、大賀 拓哉(おおか たくや)さん
山口県と島根県の県境に位置する萩市田万川(たまがわ)。「道の駅ゆとりパークたまがわ」のすぐ近くに立ち並ぶ「萩アグリ」のIoTトマトハウスでは、県内でも有数の最先端IoT技術を用いたトマト栽培が行われています。農作業だけでなく、パソコンを使いながらセンサーや自動制御の設定を行っているのは、いずれも25歳(令和7年11月現在)の若手社員です。
令和2年に農業大学校を卒業し、萩アグリに就職して大玉トマトの栽培を担当する岩山凌さんと、令和4年に製造業から転職し、ミニトマトを栽培している大賀拓哉さんのお二人に、施設を案内していただきました。

萩アグリの取り組み
「萩アグリ」は、農業従事者の高齢化や後継者不足といった地域課題の解決を目的に、地元の7つの集落営農法人が連携して設立されました。
ほとんどの作業が自動化され、スマート農業を取り入れた施設の建設には、「農林水産業みらい基金」の助成も活用されています。
トマトハウスでは、窓が自動で開閉する音がひっきりなしに聞こえます。これは、センサーがハウス内の気温を感知し、設定した温度を超えると自動的に開閉する仕組みのためです。人の手でここまで細かい調整を行うのは不可能で、まさにIoTの強みが活かされています。
※IoT・・・Internet of Thingsの略。様々なモノがインターネットにつながり、相互に情報をやり取りする仕組みのこと。
大玉トマトのハウス
ハウスに入る際は(病害虫の発生を予防するため)靴を脱いでスリッパに履き替えます。入口は虫の侵入を防ぐ二重扉になっており、さらに内部は道具置き場と栽培エリアが扉で区切られています。

栽培エリアの入り口

大玉トマト栽培エリア

天然の有機培土(ヤシ殻など)を使用

水やり、施肥(肥料)は、この管から自動で行われる


受粉はハチが担当

大玉トマトの株は背が高く伸びるため、作業はレール上を動く専用の台車に乗って行います。

台車は足元のボタン操作で移動できるため、歩き回る必要がありません。


ハウス入口には、水やり用・肥料用・農薬用・ミスト用のタンクがずらりと並びます。

遮光カーテンや窓の開閉などの自動制御装置も設置されており、非常時には手動に切り替えられる仕様になっています。

自動制御の細かな設定を行うパソコン
自動制御の細かな設定は、隣接する部屋のパソコンで行います。プログラムされたデータに従い、適切なタイミングで給水・施肥・散布が自動で行われます。
ミニトマトのハウス
大玉トマトとは完全に分離されており、行き来する際のスリッパも別です。大玉トマト同様、窓と遮光カーテンは自動開閉。
ミニトマトは草丈が低くハウスもコンパクトですが、収穫量が多いため収穫作業には多くの時間を要します。

ミニトマト栽培エリア

自動開閉する窓と遮光カーテン

気温、湿度、CO2濃度、地温などをモニタリングする環境制御システムのセンサー

自動制御装置と水や肥料などのタンク
ミニトマトと大玉トマトのシステムとは完全に別れており、別のメーカーのシステムを採用しています。

水タンク(左)と自家発電装置(右)
若手社員の働き方
岩山凌さん(大玉トマト担当)

―出身はどちらですか?
萩市内で生まれ育ちました。
―幼少期に熱中したことは?
小さい頃から、友だちとサッカーやドッジボールをして遊んだり海に行って魚釣りをするなど、自然の中で遊ぶのが大好きな子どもでした。両親・祖父母共に農家ではなかったのですが、小学生の時に祖父母の知り合いの農家さんの手伝いでゴボウ栽培を経験し、農業に興味を持つようになりました。
―学校はどちらに通われたのですか?
農業大学校に進学しました。卒業後、萩アグリへ就職しました。
―学生時代に取り組んだことは?
中学の頃は剣道をしていて、高校では陸上部で砲丸投げとハンマー投げをしていました。体が大きかったので、投げるのは向いていたようです。県大会の全国大会出場ライン(8位以内)まであと一歩の9位で悔しい思いをしました。
―農業を志したきっかけは?
小学生の頃から農業をしたいと思っていました。高校進学時、親から「将来の選択肢を広げるために普通科に行くこと」を勧められ、普通科を選びましたが、思いは変わりませんでした。
―農大では、どんな日々を送られたのでしょうか?
野菜専攻で、主にキャベツや葉物を栽培していました。野菜専攻は私を含め10人で、広い畑の管理は本当に大変でした。特にイチゴ担当の友人は、朝の3時半から夜の10時まで作業していたこともありました。しかし少人数のため、栽培のノウハウをしっかり教えてもらえました。
―萩アグリを選んだ理由は?
萩市で野菜栽培ができるという理由で選びました。農大でトマト栽培や露地野菜の栽培など実践的な経験を積み、学んだことが活かせると思ったからです。また、祖母の介護のサポートができるように、実家から通える距離であることも決め手です。
―働き始めての印象は?
こんなにも施設や機械で作業が減るのかと驚きました。農大のときは全部手作業でしたが、萩アグリでは半分以上が機械によって行われます。特に水やりが楽になりました。設定通りに水やりができるため、やりすぎて根腐れする…という失敗もないです。
―IoT技術はどのように習得したのですか?
入社後にゼロから学び、機械導入時の運用サポートで習得できました。
―大玉トマトの特徴を教えてください。
冬春トマトは、桃太郎シリーズを栽培しています。味の評価が高く、なじみのあるトマトです。イベントでアンケートを取ると「美味しい」と多くの人に評価されて人気でした。
春夏トマトは夏の暑さに耐えられて、皮が割れにくい「麗(れい)シリーズ」を栽培しています。安定して量を出荷できる瑞々しいトマトです。
※「麗(れい)シリーズ」・・・裂果(実が割れること)に強く、病気にも強い大玉トマトの品種群を指します。

―仕事をする上でのこだわりは?
地元に根付く愛されるトマトをつくること。スーパーや直売所の売り場スペースに1年間継続して、途切れる事なく供給できるということにこだわっています。
―仕事で大変なところは?
少人数のため、体調不良で休むと業務に支障をきたす点です。なぜなら収穫が遅れると木が折れることもあり、復旧が大変です。
―これからチャレンジしたいことは?
病気対策で、風通しをよくするために植える本数を減らしていますが、そうすると収量が落ちるため、1株あたりの分枝を春以降、これまでの2本から3本に増やし収量アップに挑戦中です。今のところ順調です!
―仕事のやりがいや魅力は?
収穫量が増えて1日に1.2トン採れたときは嬉しかったです。また、イベントで「美味しい!」とお客様から沢山のお褒めの言葉をいただくと、とても励みになります。
大賀拓哉さん(ミニトマト担当)

―出身はどちらですか?
島根県益田市です。実家は兼業農家で米づくりをしています。
―幼少期に熱中していたことは?
父の影響で釣りによく行っていました。
―学生時代に取り組んだことは?
小学校の頃は野球をしていて、中学校ではテニスをしていました。

―農業を仕事にしようと思ったのは、いつですか?
仕事を探していたときに、親戚から萩アグリを紹介されたことがきっかけです。自然豊かな職場環境に一気に惹かれました。
―栽培しているミニトマトの品種やその特徴を教えてください。
「千果(ちか)」です。馴染みのある定番の味で、「食べやすい」「美味しい」と好評です。過去に色々な品種を栽培していたこともありましたが、お客さまの声を聞いて「千果」一本になりました。

―仕事をする上でのこだわりは?
実の割れをできるだけ少なくして、病気を出さずに管理をすることです。
―仕事の内容は?
月曜日・金曜日が出荷日。
それ以外は誘引、葉かき、システム調整(季節ごとの温度・水の設定)を行います。
季節によって1年間の流れはほとんど変わりません。

―大変なことは?
落雷でシステムが故障して、データが全て消えたときは大変でした。

―仕事のやりがいや魅力は?
自分で育てたトマトが売り場に並び、お客様から「甘いね」「待っていた」などの声をいただいたときにやりがいを感じます。
これからもお客様に感謝されるよう、真心を込めた仕事をしていきたいと思っています。

貴重なお話ありがとうございました。IoTを活用したトマト栽培からますます目が離せません。さらなるご活躍を期待しています!

基本情報
| 会社名又は個人名 | 萩アグリ株式会社 |
|---|---|
| 住所 | 〒759-3202 萩市大字上小川東分1336(郵便物)【 トマトハウスは「コメリハード&グリーン山口田万川店」の裏手】 |
| 電話番号 | 08387-4-0730 |
| URL | https://www.miraikikin.org/activities/agriculture/hagi.html |
| 販売場所 | 山口県内のスーパー「キヌヤ」・「アトラス萩店」/道の駅ゆとりパークたまがわ/福の里直売所/いかマルシェ/道の駅阿武町/ふれあいランド萩ファーマーズマーケット |
