萩のつくり手 <第32回>
「かんきつ農園」秋本 直紀(あきもと なおき)さん

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橙色の果実をたわわに実らせた樹木が辺り一面に広がる萩市大井地区で、温州みかんやイヨカンの栽培に取り組む秋本 直紀さん。祖父から受け継いだかんきつ畑のほかに、「萩・夏みかん祭り」の会場となっている「かんきつ公園」の管理もされています。日々の丁寧な栽培管理の取り組みが評価され、2024年10月に「山口県農山漁村中堅青年表彰」を受賞されました。その秋本さんに、日々の仕事やこれまでの歩みについてお話を伺いました。

 

―出身はどちらですか?

萩市です。生まれたのは平安古(ひやこ)で、浜崎(はまさき)で育ちました。3歳下の弟がいます。

 

ーどのような子ども時代を過ごされたのですか?

ゲームばかりしていました。明倫小学校に通っていて、友達の影響で空手を習っていました。その後、ソフトテニスにも通うようになり、萩西中学校に進んでからはソフトテニス部に入りました。

 

ー現在につながるようなことは何かしていましたか?

父の実家がある大井地区七重(ななえ)の祖父のところには、よく遊びに行っていました。田植えのときなどは田んぼの手伝いをしていました。

 

ーお父さまも農業をされていたのですか?

父は元々農業をしていたわけではないのですが、体調を崩してから勤めた会社を辞めて農業をするようになりました。

 

ー中学卒業後は、どのような道に進まれたのですか?

奈古(なご)高校(現材の萩高校奈古分校)の農業科に進学しました。当時は農業科と普通科の2つのクラスがあって、1クラス20人くらい。農業科は、野菜、果樹、畜産、花卉(かき)のコースを選べたのですが、自分は、花卉を選択しました。何をやってもおもしろそうだなと思っていましたが、人数のバランスを見て、花卉を選びました。

高校時代の部活は、はじめソフトテニス部に入っていましたが、次第に足が遠のき、途中から友人がいた美術部に入りました。絵を描くのは、ある程度は好きですが、今は描いていません。

 

ー高校卒業後は、どのような道に進まれたのですか?

防府市(ほうふし)にある農業大学に進みました。奈古高校の農業科から農業大学に行ったのは、自分ともう1人のたった2人だけで、それ以外の同級生たちは農業とは関係ない道に進んでいました。農業大学でも野菜、果樹、畜産、花卉の専攻に分かれていたのですが、その頃には、七重で祖父がやっているかんきつ栽培をやろうと具体的に考えて、果樹のコースを選択しました。

 

ー農業大学では、どのような日々を過ごされたのでしょうか?

農業大学での2年間は、椅子に座って話を聞くような授業よりも実習が中心でした。1人が畑一ヶ所を任されていて、年間にわたって作業がたくさんありました。全寮制だったので、初めて実家を出て新鮮でした。1年目は初対面の人と相部屋で、慣れるまでは気詰まりでしたが、2年目は個室でした。休みの時などは、友達とパソコンでアニメを見たり、ゲームをしていました。

 

ートラクターなどの運転や機械の操作は得意なのですか?

「ぶつけたらどうしよう」と心配になってしまってあまり好きではありません。ユンボ(油圧ショベル)の免許は、高校生の時に取りました。今は使う機会はありませんが、七重の祖父の家にはあります。祖父がごぼうを作って収穫するときに使っていたくらいです。

農業大学の学生は車の免許もマニュアルで取得します。農業用の大型特殊免許は、大学生の時に取りました。トラクターに乗るだけでなく、ロータリーやボルトのつけ外しをする整備を習った記憶があります。かんきつ栽培で使うのは、収穫した果実を運ぶための運搬機と防除のときに薬を散布する動力噴霧機(どうりょくふんむき)くらいなので、それほど機械を使うことはなくなりました。

※防除・・・農作物の栽培時に、発生する害虫や病気を事前に予防、既に発生している場合、それを排除すること。

 

ー農業大学卒業後は、どうされましたか?

萩夏みかんセンターを管理している(株)萩耐久社で、2年間研修をしました。大学時代の実習より本格的になり、最初は4人でやっていましたが、管理している面積も大きく、やることが増えて作業量は多かったです。そのため、年間を通した作業の流れがしっかり理解できました。(株)萩耐久社で栽培していたのは夏みかんが中心で、せとみ、はるみ、ユズなども少しずつ栽培していました。

 

おじいさまを継いで、農業の道に進むことについて、家族の反応はどうでしたか?

両親からは特に反対されることもなく、淡々としていました。祖父は、「そうか」という感じで特に反応はなかったです。もしかしたら、内心嬉しい気持ちがあったのかもしれませんが、祖父からアドバイスされたり、一緒に農作業をすることもあまりないです。たまに一緒に草刈りすることもあるし、頼まれれば田植えの手伝いをすることはありますが、基本的には別々でやっています。

 

ーおじいさまは、93歳で一人暮らし。農作業も現役でされていて「スーパーおじいちゃん」と呼ばれているそうですね。

住んでいるのは同じ大井地区ですが、祖父は山を上がった七重に住んでいます。時々おかずを差し入れることはあるものの、基本的には自炊していて、とても元気です。

 

ー代々農業をされていたのでしょうか?

この辺では兼業で農業をしている人が多かったようです。祖父も農業だけでなく勤めに出ていて、大工をしていたそうです。

 

ー生産している食材とその特徴は何ですか?

温州みかん、イヨカン、はるみ、甘夏がメインです。面積は8反ちょっとくらいでしょうか。どれも美味しいですよ。七重の温州みかんは、土がいいのか特別美味しくできる気がします。納品している店からも「美味しい」と評判がいいです。どれも味が濃いと思います。

 

ー七重には海が見える絶景スポットもありますが、土はどんな土なのでしょうか?

ほぼ粘土質です。土だから、雑木林の落ち葉や山のミネラル分がたっぷり入っていて、いい土になるのかもしれません。

 

ーこだわりや大切にしていることは何ですか?

丁寧に作業することを心がけています。それと最近は、これまで研修で習ってきたことだけをするのではなくて、インターネットで新しい情報を集めるようになりました。他のかんきつ栽培をされている方から防除をしなくてもよくなる剪定方法があると聞き、You Tubeで調べて本も買い実践してみました。

研修では、剪定する際に「立ち枝は切る」と習いましたが、新しく調べた剪定方法は、切り上げ剪定というもので「立ち枝は残す」が基本です。この剪定方法を実践してみると、枝の切り口の傷のふさがり方が全然違うと効果を実感しています。なので、今は切り上げ剪定に変えました。管理を任されているかんきつ公園でも、この剪定方法に変えていっています。

 

ーかんきつ公園には、どのくらいの頻度で通っているのでしょうか?

通常は週1回です。剪定と摘果(果実の間引き)の時期には週2回通っています。

 

ーかんきつ栽培で最も重要な作業は何ですか?

剪定と摘果です。剪定をうまくやっておかないと、その後の作業全てに影響が出てしまいます。摘果をちゃんとやらないと収穫できる果実の大きさも変わってくるし、明らかに木が弱ってしまうため、とても重要なのです。

 

ーこれからチャレンジしてみたいことは何ですか?

剪定を変えたこともそうですが、より良い栽培技術についての新しい情報を調べて実践していきたいと思います。

 

ー1年で一番忙しい時期はいつですか?

収穫の時が一番忙しく、一日中ずっと収穫に追われています。

 

ー一年間の流れはどのような感じですか?

収穫が11月頃から始まり、イヨカンはなるべく寒波に当たらないように年内に終わらせます。甘夏は、寒波を避けるために早くに収穫して貯蔵していたこともあるのですが、今年は寒波もなかったため、木なりのまま注文後に収穫するなど、貯蔵や出荷作業の方法を試行錯誤しています。はるみは、12月頃から収穫が始まり、1月中には終わる感じです。収穫が終わったら、石灰や肥料をまきます。そして、1月か2月ごろから防除が始まります。

剪定については、一番力を入れている作業ということもあり、本来は3月ごろまでに終わらせるとされていますが、終わらないので梅雨前まで時間をかけてずっとやっています。その後は、摘果、そしてまた収穫という流れです。

 

ーやりがいや魅力は何ですか?

一年に1回、収穫の時に答えあわせのような感じで結果がわかるところがおもしろいです。それと、農作業の後は爽快感があります。草刈りや剪定のあと、収穫のあと植物をよい状態に切るとスッキリして気持ちいいです。

 

ー大変なところはどのようなところですか?

最近特に暑いので、夏場の農作業が大変です。それと、資材が高騰していることもあり、利益を出すのは大変です。

 

ー儲かる農業、儲かる仕組みについて教えてください。

わかっていたらやっていますし、簡単なことではないですが、高く売ることでしょうか。それとコストを減らすこと。農薬が一番高いので、農薬を減らせば利益を出せると思います。

 

ーこれから農業を始める方へのメッセージをお願いします。

収入源については農業だけでなく、いくつか副収入を作っておくといいと思います。

 

貴重なお話ありがとうございました。丁寧なかんきつ栽培を心がける秋本 直紀さんのさらなるご活躍を期待しています!

 

基本情報

会社名又は個人名 秋本 直紀さん
住所 山口県萩市大井
電話番号
URL
販売場所 道の駅萩しーまーと、ふれあいらんど萩、道の駅あさひ

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