萩のつくり手 <第20回>
「ミノルファーム」 細田 実(ほそだ みのる)さん
今回で記念すべき第20回を迎える人気シリーズ「萩のつくり手」。
新規就農1年目から2年連続でイタリアントマト「ロッソナポリタン」のコンテストで優勝。BLOF(ブロフ)理論という生態調和型農業の有機農業で野菜作りに取り組み、そのおいしさや栄養価で高い評価を得ているミノルファーム 代表 細田 実さんにお話をお伺いしました。
-出身はどちらですか? どのような子ども時代を過ごされたのでしょう?
生まれたのは福岡県です。父が転勤族だったので、島根、宮城、愛知と引っ越しました。一番長かったのは愛知県です。父が萩市出身、母が山口市出身で、子どもの頃は祖母が住む萩市に毎年遊びに来ていました。兄と姉がいて、自分は末っ子です。
中学生の頃は野球部に入っていました。小柄だったこともあり、レギュラーにはなれませんでしたね。高校生の頃は、ハンバーガーショップや回転寿司の飲食店で、ひたすらアルバイトをしていました。
昔も今も、好奇心旺盛なところがあり、「普通」よりちょっと変わったことをしたいという気持ちが強く、BLOF理論の農業に取り組んだのも、そんな好奇心からでした。
-高校卒業後は、どのような道に進まれたのですか?
料理の道に進んだ姉の影響で自分も料理人になろうと考え、まずは、名古屋の洋食店に就職しました。そこでは、お酒が強くないにもかかわらず、ソムリエの見習いのようなことをしました。
その後、資金を貯め、大阪の料理専門学校で学んでから愛知県に戻り、大手のイタリアンレストランで働きました。経験を重ね店長を任されるようになると、料理をしたい気持ちや独立して自分で店をやりたいという気持ちが湧いてきました。
次はパン作りを学ぼうと、東京のパン屋で修業しました。天然酵母で作るパン屋で、朝の3時からパン作りを始め、夜の7時か8時まで働くという日々でした。パンを一通り学んだら、今度はデザート作りを学ぼうと転職活動をしていると、東京の丸の内のビルにあるフレンチレストランとご縁があり、そこで1年半ほど働きました。そうこうしているうちに、自分の店を出したいという気持ちが少し変化してきました。
そんなときに、東京で「農業人フェア」があり、以前から農業に興味があったため、行ってみることにしました。そこでは、関東のブースに行列ができていたのに、中国四国のブースは閑散としていました。両親が山口県出身だったこともあり、中国ブースの山口県庁の職員の方と仲良くなり、1時間半も話し込んでしまいました。
-農業へ進む転機となったのですね?
「農業人フェア」に参加した直後に、定年退職して故郷の萩で暮らしていた父が脳梗塞で倒れてしまいました。当時、母も入院中で親の看病をする必要があり、きょうだいの中で一番身軽だった自分が萩へ行こうと思い、仕事を辞めて萩市で親の元へ移り住みました。
萩に戻るタイミングで、「農業人フェア」で知り合った県庁の方に連絡し、野菜作りをしたいと相談すると、萩市の農政課の方に平蕨台(ひらわらびだい)生産組合を紹介していただきました。
そこで1年半働きながら、BLOF理論という有機農業の塾にも通いました。有機農業を学ぶうちに、自分で自由にやってみたいと思うようになり、ビニールハウスで野菜作りをする環境を探していると、農政課の方から、福栄(ふくえ)地域で引退する農家の方を紹介してもらい、ビニールハウス9棟を譲り受けることになりました。それが、2017年のことです。BLOF理論のつながりで、イタリアントマトを中心に販路も確保していたので、経営を開始することにしました。
-萩へ移り住み、萩の印象は、どうでしたか?
自分が萩に移り住んだ時期が2015 年だったのですが、ちょうど萩市で「地域おこし協力隊」がスタートした時でした。何かしようとする同世代の移住者が増えたことで、一緒にイベントに参加する機会があったりして、孤独を感じることなく、いい時期に萩に来たと思います。仕事の面でも、自由にやりやすい環境でした。
それから、都会にいると役所の人と関わることはほとんどなかったのですが、こちらでは農業をすることもあり、市役所の人とものすごく関わりが多いことは驚きでした。
-移住後、2018年にご結婚され、二人のお子さんも誕生。パートナーの仁美さんとは、どのような経緯でご結婚されたのでしょうか?
出会ったのは、2016 年ごろでした。移住してから萩のことを知ろうと、飲食店に詳しい人たちとグループでお店巡りをしていたのですが、そのグループのメンバーとして知り合いました。
妻は以前から料理好きで、クッキングスクールに通ったり、講師をしたりしていて、店やサービスについての感じ方が同じで気が合ったのが大きかったです。
-ミノルファームのイチオシの野菜はなんですか?
やはり、この福栄のハウスで最初に作ったイタリアントマトです。これがきっかけで、ミノルファームを認識していただけたので。
-新規就農1年目から、「ロッソナポリタン」のコンテストで優勝されました。その後も連続で優勝。受賞について詳しく教えてください。
ロッソナポリタンの一番を決める「R-1コンテスト」は、栄養価や味を審査されます。2017年と2018年に2年連続グランプリを受賞しました。それから、2019年のオーガニックエコフェスタ「栄養価コンテスト」で、夏ミニトマト部門で最優秀賞を受賞しました。
-こだわりやおいしさの秘訣はなんですか?
土の中の有用菌を活性化させることを目的に、堆肥や土づくりにこだわっています。自分としては、有機農業は高品質なものを作るための手段だと考えています。「有機だからおいしい」わけではなくて、BLOF理論を理解し実践することで、栄養価が高くておいしい野菜を作ることを科学的に追求しています。
-トマトだけでなく、野菜の種類もたくさん作られていますね。
トマトだけでも3種類。そのほか、ニンジン3種類、オクラ、白茄子、かぼちゃ、ジャガイモ、ニンニク、大根、ズッキーニ、ホワイトアスパラ。年間通してだと、50種類くらい作っています。
また、料理人としての経験から、店で使うにはどんな野菜がいいか、家庭料理にはどんな野菜を使ってもらうのがいいかを常に考えて作っています。
-やりがいは何ですか?
「作る」という仕事はおもしろいし、好奇心が満たされます。
お客さまからは「野菜を作ってくれて、ありがとう」と感謝されることがよくあります。こちらからしたら、買ってもらってありがとうと感じているのに、買ってもらった上に、感謝までしていただけて、ありがたい限りです。
-大変なことは何ですか?
大雨で水没した畑があり、人参や大根が全滅してしまいました。天候次第で計画どおりにいかないという点は大変です。まだまだ、そういう失敗があるので、このようなことがないように日々修業です。
–1日の流れは?
朝は7時半〜8時くらいからハウスに行き、作業。昼には自宅に戻り、出荷などを行います。14時ごろからまた、ハウスで作業。19時くらいまでやっています。
妻は子どもの送迎をしてから、家でパック詰め作業。出荷してもらうこともありますが、基本は家での作業が中心です。
-毎月第3土曜日に中央公園で開催される萩マルシェについて教えてください。実行委員もされていますね?
野菜の試食の場として、ピザや石焼きジャガイモをしたりして、楽しんでもらえるように工夫しています。
-パートナーの仁美さんが作る野菜を使ったパンやケーキのファンも多いと思いますが、どこで味わえますか?
萩マルシェでも販売していますし、毎月1回土曜日(不定期)に、キヌヤでパンや焼き菓子を販売しています。
-これからチャレンジしていきたいことは何ですか?
妻が料理を通してやりたいことをもっと実現できるような体制を作っていきたいなと思います。
-これから農業に就きたい人へのアドバイスをお願いします。
自己流でなんでもやろうとするよりも、その土地の人の言葉を聞くことも必要だし、基本通りにやることは大事だと思います。自分が新規就農1年目でロッソナポリタンのグランプリを取れたのも、経験がない分、BLOF理論の基本を忠実にやったためだと思っています。
それと、資材などへの投資も惜しまずに、労力や時間の配分をうまくやっていくことも大事だと思います。
また、3年前から萩マルシェの実行委員をやっていますが、これから農業をしたい人へ向けて、次世代の販売の場を作りたいという思いでやっています。これから農業を志す人と、萩マルシェを通じて交流できたらと考えています。
基本情報
会社名又は個人名 | ミノルファーム |
---|---|
住所 | 〒758-0212 山口県萩市福井下4631 |
電話番号 | 090-3937-2383 |
URL | https://www.instagram.com/minoru_farm/ |
販売場所 | 市内のスーパー、萩マルシェなど |