萩のつくり手 <第35回>
「農事組合法人 むつみ」松原 惇浩(まつばら あつひろ)さん
萩市むつみ地域で約60ヘクタールの田んぼを管理し、農薬や化学肥料を半分以下に抑えた環境にやさしい米づくりを行う「農事組合法人むつみ」。お米は、スーパーや飲食店、病院や高齢者施設へと届けられ、地域の食を支えています。
その現場で、黄金色の稲穂に囲まれながらコンバインを操るのが、入社3年目の松原惇浩(まつばら あつひろ)さん。山田和男代表に「もう10年目だっけ?」と間違えられるほど、頼られる若手です。
「食べることが好きだから“作る”仕事を選びました」と話す松原さんに、お米づくりの魅力、農業のやりがい、そして地域の未来への思いを伺いました。

―ご出身はどちらですか?
萩市大井です。実家は歴史の古いお寺なのですが、その次男として生まれました。
―子どもの頃はどんなことをしていましたか?
小さい頃は、友達たちと山や川でいろいろなものを使って遊ぶなど、自然の中で新しい発見を楽しんでいました。また趣味で、家で食べる野菜やメロンやスイカの種、さつまいもの切れ端を水につけて、発芽させて、成長の様子を見守るのに夢中でした。なかなか収穫するところまではいかなかったですが、植物の成長を見守るのが楽しかったです。そのころは、当時は農業を仕事にしようとは思ってもみませんでしたが、「食べることが好き」だったので、高校進学の際に自然と農業の道を選びました。
―学生時代にどんな活動をされていましたか?
小学生のころは水泳をしていて、中学では卓球部、高校ではテニス部に所属していました。運動部で体力を鍛えられたことが、今の農業の力仕事にとても役立っています。
―農業の道に進もうと思ったのは、いつごろからですか?
中学2年生のころから農業に興味を持ち始めました。はじめは調理に関心がありましたが、「食べ物を作る側」への探求心が強くなり、農業を志すようになりました。
高校は萩高校奈古(なご)分校の総合学科に進学しました。農業分野に特化した授業があり、野菜や花の栽培を学びました。ビニールハウスで鉢物の花を栽培し、道の駅で販売した経験もあります。
クラスメイトとは結束力が強く和気あいあいとした仲間たちと、農業だけでなく福祉や食品加工の実習などもあり、鶏肉の燻製やジャムを作って学校祭で販売することもありました。また、フォークリフトやアーク溶接など複数の免許を取得しました。
―高校卒業後の進路は?
担任の先生に勧められて、防府市の農業大学校に進学しました。農大では、野菜専攻で、キャベツや白菜などの露地野菜を中心に学び、ハウスではほうれん草などの栽培のノウハウも身につけました。
―農大での生活はどんな感じでしたか?
全寮制で、毎朝の調整作業や出荷など、実践的な経験を積みました。高校時代よりも「自分たちで管理する」意識が強くなり、やりがいを感じていました。
農大の野菜選考のクラスメイトはみんな協力的で、プロジェクトをスムーズに進めやすく友人たちとは夜に息抜きで外食するのが楽しかったです。
― 農事組合法人むつみに入社した理由は?
農大を卒業してすぐに入社しました。決め手は、実家から通える距離であることと、働きやすい環境づくりへの配慮でした。
インターンシップの際に、自信の価値観と合致している、これまでの経験を活かして貢献できると思ったからです。

― 現在の仕事内容と生産している作物は?
主に米と大豆を栽培しています。ここのお米は甘みがあり、とてもおいしいです。「コシヒカリ」のほか、「にじのきらめき」「あきまつり」などの新しい品種も育てています。飲食店やお弁当屋さん、病院などでとても人気があります。
味の違いもあり、私のお勧めは「あきまつり」が特においしいと思います。酒米の「山田錦」も栽培しており、地元の酒造にも使われています。

― 特徴やこだわりは?
JGAP(農業生産工程管理)の認証を取得しており、生産工程をすべて記録しています。
また、化学肥料や農薬を50%以下に抑え、有機肥料を使用。山口県の「エコやまぐち50」認証も取得し、食の安全にこだわっています。
栽培面積は約60ヘクタール。10人ほどで管理していますが、高齢の組合員も多く、人手不足が課題です。

― 仕事で大切にしていることは?
体が資本なので、健康管理を大切にしています。早寝早起き、バランスの取れた食事を心がけています。
― 今後チャレンジしたいことは?
趣味としてニワトリの飼育をしてみたいです。
農大時代にわな猟の資格を取り、今年1月には猟銃免許も取得しました。冬には狩猟にも挑戦する予定です。
― 仕事の魅力や楽しい瞬間はどんなときですか?
やっぱり、自分で作ったおいしい米を食べられることです。
新米の時期は格別ですし、黄金色に実った田んぼを見ると「やっててよかった」と思います。
それと、自然の中で働けることは何よりの魅力です。休憩時間に、柿や山ブドウを食べ、四季の移ろいを感じながら働けるのが醍醐味です。

― 大変なことは?
機械トラブルがあると大変です。稲刈り前に稲が倒れてしまうと収穫が大変で機械トラブルも多く、修理に手間がかかるのが悩みですね。

― 10年後の展望は?
組合員の高齢化が進んでいるので、人材の確保が課題です。
中山間地域で斜面も多く、完全な機械化が難しい面もありますが、少しずつ改善していきたいです。

― 新しく農業を始めたい人へ「ひとこと」お願いします。
自分で作ったものを食べられるのが農業の魅力です。
今の時代だからこそ、第一次産業に関わる人が増えて、作る楽しみ、食べる楽しみを知ってほしいです。
機械操作に慣れていると仕事がスムーズなので、ご興味のある方はぜひ検討していただければと思います。
一緒に働ける日を楽しみにしています。

貴重なお話をありがとうございました。米づくりを通して広がる、松原惇浩さんの“食の探求”の世界。これからどんな未来が描かれていくのか、とても楽しみです。今後のご活躍を応援しています。

基本情報
| 会社名又は個人名 | 農事組合法人 むつみ |
|---|---|
| 住所 | 〒758-0305 萩市大字吉部下4099-1 |
| 電話番号 | 08388-6-0370 |
| URL | https://yama-agri.sakura.ne.jp/%e8%be%b2%e4%ba%8b%e7%b5%84%e5%90%88%e6%b3%95%e4%ba%ba%e3%80%80%e3%82%80%e3%81%a4%e3%81%bf/ |
| 販売場所 | 山口県内のスーパー「まるき」等 |
