萩のつくり手 <第19回>
「高津農園」 高津 府制(たかつ あつのり)さん

関連食材
  • 小川桃
Loading
Share
画像:

山口県内最大の桃の産地として知られる、萩市東部の田万川(たまがわ)地域・小川地区。7月が近づくと、甘くてみずみずしいこの果実を、いまかいまかと待ちわびる人が多くいます。
肥沃な平山台(ひらやまだい)で、袋がけをせず日光をたっぷり浴びて育つことから「サン・ピーチ」という総称で親しまれ、収穫したその日に選果して出荷するのが、桃農家6戸で運営する小川育桃会のこだわり。その出荷部を担い、自らも高津農園の3代目として栽培を受け継ぐ高津 府制さんにお話をお伺いしました。

 

-高津農園は、いつ頃から桃の栽培に取り組んでいますか?

もともとここは桃畑ではなく、葉タバコなどを栽培していました。平山台は今では果樹産地として有名になりましたが、果樹栽培が始まったのは昭和34年頃で、当時は桃と栗からスタートしたと聞いています。うちでは祖父が農園を切り拓き、その後父が受け継いで、現在は合わせて2ha弱の農地で約400本の桃の木を育てています。父は今も現役バリバリで、僕から見てもいろんなことを知ってるなぁと思います。ずーっと仕事をして、ずーっと休まない。本当にこの仕事が好きなんでしょうね。

 

-高津さんご自身は、どのように育ってきたのですか?

生まれも育ちも小川地区で、3兄弟の長男です。子どもの頃は収穫した桃を運んだり手伝ってはいましたが、本格的な作業は父と母が行っていました。

中学校では野球をしていましたが、萩工業高校に入ってから陸上にハマりました。長距離が好きで、40歳となった今でも年間13か14レースに出場します。結果が出るとうれしいし、妻も走ることが趣味なので、子どもを含めて家族で遠征することもあります。普段の農作業が、体力と気力を鍛えるトレーニングになっているかもしれませんね(笑)。

 

-工業高校に進んだのは驚きです。その後、どうして農園を継ぐようになったのですか?

両親の希望で、後を継ぐことが自然な流れでした。特に父の思いが強かったように思います。
跡を継ぐことについてうまく言えませんが、代々続く酒蔵など老舗の後継者が「自分の代で終わらせるという選択はしたくなかった」という話を聞くと、自分の思いと重なる部分を感じます。

 

-果樹栽培の技術はどのように習得したのですか?

高校を卒業して山口農業大学へ進学し、そこから茨城県にある農業・食品産業技術総合研究機構の果樹研究所(現:果樹茶業研究部門)に入って修業しました。その後は小川に帰り、父母と一緒に高津農園を営みながら経験を積んでいます。もう15年くらい経ちましたね。

 

-現在栽培している桃の品種を教えてください。

7月初旬から収穫が始まるのが、早生(わせ)の「恋みらい」です。少し小ぶりですが香りが良く、果肉がしっかりとして食べ応えがあります。梅雨が明ける7月中旬からは中生(なかて)の代表品種「あかつき」が収穫期を迎え、選果場が本格稼働します。そのほか「なつおとめ」や「川中島白桃」も育てていて、今は4品種に落ち着いています。

 

-平山台の桃は、どうしてこんなにおいしいのでしょう?

ありがとうございます。無袋栽培(むたいさいばい)という育て方が大きな特徴だと思います。平山台という名前の通り、地形が台地であることを生かし、しっかりと実に日光を当てることでよく熟れます。収穫前には銀色のマルチ(耕地を覆うシートのこと)を木の下に敷き、日光を反射させて全体に行き届かせ、品質を良くする仕上げをしています。
また、桃はとても繊細で、鮮度や状態が変わりやすいものなので、組合(育桃会)では朝収穫してその日のうちに選果し出荷することを徹底しています。地元の道の駅や選果場で購入した場合、木で熟れたものを鮮度の良い状態でその日のうちに食べていただけるので、おいしさも格別かもしれません。

 

-糖度で言うと、どれくらいでしょうか?

個体差やその年の気候に左右されるので一概に言えませんが、良いときは15〜17度あります。僕は現在、組合の出荷部として選果場の運営も担当していますが、毎回各出荷者の糖度を計っています。この記録があれば、おいしさをお客様に伝えることができます。今年は雨が多かったですが、甘さは乗ってきてますよ(2023年現在)。ちなみに、硬度も計ります。多くの方が桃は実が柔らかいとおっしゃいますが、新鮮なものは張りがあって硬度があるんです。召し上がる際に手に取ったとき、柔らかくない桃は熟れていないわけではなくて、それは新鮮な証拠。このポイントを知っていただければ、さらにおいしく味わっていただけると思いますよ。

 

-名産地として、組合の役割も大きいですか?

そうですね、例えば病気が出ないように組合で防除日誌をつけて情報を共有できたり、年齢が近い仲間もいるのでモチベーションUPにつながります。また、出荷をスムーズに行える選果場を持てることも一つのメリットだと思います。おかげさまで県内中に出荷でき、毎年選果場まで足を運んでくださるリピーターが多くいるほど好評をいただいています。

一方で組合員が減り、ニーズはあっても供給が足りない状況です。人が減ると、桃がどんどん実っても収穫する人手や選果する人手が足りなくなるんです。今はその対策として、梨農家さんに手伝っていただいています。平山台は梨の産地としても有名ですが、桃と梨はちょうど収穫期がズレるので、手を貸していただくことで成り立っています。逆に僕たち桃農家は、春に梨の受粉作業を手伝っています。
今後、組合や桃栽培を継続していくには、単価UPも課題だと感じています。

 

-天候不順など、自然相手だと大変なこともありますよね。

そうですね、良い年は組合全体で39トンの収量がありましたが、低いときは17トンの年もありました。果樹は収穫が年1回なので、ハイリスク・ハイリターンな面もあります。この経験から、うちではりんごも栽培しています。袋掛けを7月上旬までに終え、桃の収穫が終わる8月中旬頃から除袋し、下旬から12月まで収穫ができます。こういったサイクルにより、安定的な営農を目指しています。

 

-やりがいは、どんなときに感じますか?

やっぱり、1年かけて育てたものが収穫できたときですね。実が熟れ始めると、どんどん熟れるので、午前中という限られた時間にどれだけ収穫できるかが勝負(午後は選果・出荷作業のため)。雨が降っても休みたくても桃は待ってくれないので、一番しんどい時期ですが、1年分の思いがあるから頑張れます。初めて収穫したものは少しかじって、出来を確かめます。甘みを感じてホッとしたり、笑顔になったりします。

 

-農作物の場合、ついつい収穫に目が向いてしまいますが、作業は年間を通してありますよね?

桃は、りんごの収穫が終わった後から木の剪定が始まります。これがすべての土台になるので、一番大事な作業と言えるかもしれません。ロジックやマニュアルはありますが、木も年齢を経たり日焼けしたり強風の影響で折れやすくなったりするので、15年やっていても剪定はとても難しいことです。実がついた時に日当たりが良くなることをイメージし、枝の配置を見ながら行います。

新芽が出るまでに枝数を減らし、樹勢を保ってあげることも大事です。春には花も咲くので、開花前に半分ほど摘蕾(てきらい:余分なつぼみを摘みとること)し、5月の摘果(てきか)作業へ続きます。こういった作業も人手不足なので、手伝ってくださる方がいるとうれしいですね。

 

-これから果樹栽培を始めてみたい方へ、アドバイスをお願いします。

この平山台も高齢化と後継者問題が聞こえてくるので、ご縁があるなら引き継ぐ形で始めたほうが、初期投資も少なくすんで良いと思います。行政機関や地域が行うマッチングの場を利用するのは良案ですよね。

最近、ワインの醸造家を目指してぶどう栽培から手がけたいという方が都市部から移住され、うちの農園の土地を利用してチャレンジを始めていらっしゃいます。このように新しく加わってくれる方がいることで土地が荒れず、高齢化対策にもつながるので、個人的にも応援していきたいと思っています。

 

基本情報

会社名又は個人名 JA山口県 阿北営農駐在所
住所 〒759-3203 山口県萩市中小川621-1
電話番号 08387-4-0311
URL
販売場所 小川果樹選果場(午後のみ)、道の駅ゆとりパーク たまがわ

地図

Googleマップ

農林漁業就業情報