萩のつくり手 <第18回>
「小野養豚」小野 靖広(おの やすひろ)さん

関連食材
  • 萩むつみ豚
Loading
Share
画像:

萩市のむつみ地域で、エコフィードによる循環型農業に取り組み、「萩むつみ豚」を生産・販売する有限会社小野養豚の代表取締役 小野靖広さんにお話を伺いました。

※エコフィード:食品残さ等を利用して製造された飼料です。エコフィードの利用は、食品リサイクルによる資源の有効利用のみならず、飼料自給率の向上等を図る上で重要な取組です。

 

出身はどちらですか?どのような子ども時代を過ごされたのでしょう?

萩市むつみ地域です。きょうだいは、姉と妹がいます。子どもの頃は、勉強は好きではなく、田んぼで野球をしたり、虫取りしたり、遊んでばかりいました。養豚は祖父の代に始めたのですが、当時は牛も飼っており、農業もしていて、田植えや稲刈りの手伝い、豚の移動や堆肥の袋詰めの手伝いをしたこともありました。

中学・高校では、部活に打ち込んでいました。中学では陸上、高校は萩高校に進み、バレーボールをしていました。

 

高校卒業後は、どのような道に進まれたのですか?

福岡の大学に進学し、工学部で電気工学を学びました。当時は、家業を継ぐ気はさらさらなかったです。Windows95が発売されたころで、卒業後は、大阪のIT企業に就職しました。企業のパソコンの設置やメンテナンスする業務を3年間ほど行っていましたが、会社の寮から満員電車に乗って通勤するのが苦痛でした。その頃、父が怪我をして仕事ができない時期があり、家業を継ぐことを意識するようになりました。
24歳のときに、IT企業を辞めてUターン。IT企業の仕事には、自分の代わりはいくらでもいるけれど、家業には自分しかいないので、この道を選びました。

 

都会を経験してからのUターン、いかがでしたか?

最初は、すぐに話が広まってしまう田舎のコミュニティーに戸惑いを感じました。そんな中、母豚が子豚を出産する豚舎で火事を起こしてしまい、2ヶ月分の豚を失ってしまったので、とても大変でした。
その翌年、萩市の「みどりや」で販売が始まったのですが、その時に初めて「むつみ豚」というブランド名で売り出しました。それまでは、ほとんどを福岡の食肉市場にせり出荷をしていて、「山口県産豚肉」として販売されていました。「むつみ豚」として認知していただけるようになったのは、これがきっかけです。

 

「小野養豚」創業の経緯を教えてください。

祖父の代に養豚を始めたのですが、当時はほかの農家との共同経営からスタートしました。その後、養豚をメインの事業にして、父が平成5年に法人化しました。平成7年ごろから、飼料はリサイクル資源のパンなどを使ってはいましたが、その品目を増やしていったのは、ここ5年ほどです。そして、資源循環型「エコフィード」として評価していただくようになったのは、最近です。

 

令和元年にはエコフィードを活用した畜産物生産の優良事例として、最優秀賞(農林水産省生産局長賞・中央畜産会長賞)を受賞されました。いかがでしたか?

資源循環型の養豚にはこだわってきました。日頃、評価してもらえることはそれほどないので、報われた感じはあります。嬉しかったです。

 

萩むつみ豚のこだわり、大事にしていることは何ですか?

元気な豚を育てるために、特にエサの調合にこだわっています。エサは、全体の5〜6割がエコフィード、3割がトウモロコシ、1割が大豆かす、残り1割がバランスを整えるためのものなのですが、そこに乳酸菌や黒麹菌を調合し、腸内環境を整えています。この配合のエサにより、甘くて柔らかい肉質を生み出しています。また、乳酸菌を配合していることで、臭みがないのも特徴です。
豚の腸は人間の4分の1ほどしかないので、吸収はあまりよくなく、フンもたくさん出ます。そこで、もう一つのこだわりとしては、豚舎を発酵床という仕組みにしていることです。普通の土やコンクリートの上だと、フンなどの臭いが強く出てしまうのですが、おがくずをプール状に敷き詰めた上で豚が暮らすことで、豚のフンや尿などを豚自身が走り回って掻き回してくれるので、そのまま発酵して堆肥ができるのです。そうすると臭いがあまりしません。

 

お仕事の1日の流れ、年間の流れを教えてください。

豚は1日2回の食事をします。朝は7時半にエサやりをするところから仕事がスタートします。その後、豚の様子を見回り、子豚が生まれていないかなども確認します。そして従業員の1日の作業の流れを指示して、人手が足りないときは、飼料の調合をひたすらやります。あとは、発酵床の入れ替え。だいたい17時半くらいに終わります。
年間を通して、出産はあります。豚は妊娠期間が4ヶ月。21日間授乳。その後、子どもと離し、5日で種付け。年に2.4回くらい出産する母豚もいます。季節の変わり目には、豚舎には暑さ寒さの対策をします。秋は稲刈りが終わったら、提携している田に堆肥をまきます。

 

やりがいは何ですか?

萩むつみ豚を「おいしい」と言ってもらえることです。そのために頑張っています。

 

大変なことは何ですか?

豚のエサやりがあるので、遠出ができないことです。家族旅行はまず無理ですね。まだ父と母が元気なので、できないことはないのですが。

また、国内で豚熱が発生していて、昨年4月の法改正により管理のルールが厳しくなっており、簡単に豚舎に立ち入ることはできません。豚舎に立ち入るには、衣服や靴を着替える必要がありますし、豚は屋根がついていないところを歩いてはいけないというルールもできました。県内でも野生のイノシシに豚熱の陽性が出ているので、緊張感を持って管理しています。非加熱のエサから感染した例もあり、エサは加熱しなくてはならなくなりました。うちでは、以前からエサは乾燥させるために加熱処理していたので、助かりましたが、もしも、1頭でも陽性になったら全頭処分しなくてはならなくなってしまいます。

 

これから養豚を仕事にしたい人へのアドバイスをお願いします。

しっかり知識をつけ、学んでから始めるに越したことはありません。養豚は繁殖が一番難しいです。また、生まれた子豚育てるのも経験が必要です。「養豚の仕事は豚と接することができる」という思いで希望される方もいらっしゃいますが、実際には、豚と触れ合うことよりもエサの調合など体力勝負の地道な作業も多いので、理想と現実をしっかり見極めていただくことをおすすめします。
この仕事に必要なのは、とにかく「やる気」です。やる気さえあれば、体力は後からついてきます。それと、豚の様子やちょっとした変化によく気付いて、対処できるような小まめな人は向いていると思います。

 

社長として、心掛けていることはありますか?

従業員に長く働いてもらうための工夫をしないといけないと考えています。モチベーションを高められるように、給料に還元できるように、努力しています。

 

儲かる仕組みの作り方を教えてください。

工夫するしかないと思います。うちは、薄利多売は無理なので、お金をかけてでも、いいものを作るということに注力しています。しっかり市場調査マーケティングする必要があると思います。

 

会社は、どんな役割分担で運営されていますか?

パートと社員を含め11人が働いています。役員は、両親と自分たち夫婦の4人です。妻は経理、営業、母豚が出産する分娩豚舎の管理。母がやってきたことを3年前に受け継いだ形で、両親がやってきた役割分担をそのまま引き継ぎました。
両親は昭和20年代生まれで、70代ですが、まだまだ元気に働いています。父は、怪我や病気もありましたが、二人とも働くことが元気に繋がっているように感じます。

 

先代と変えたところはありますか?

IT化しました。両親のころは、経理も豚の繁殖の記録なども紙に書きとめるやり方でしたが、会計はパソコンで会計ソフトを使い、記録も専用のソフトを使ったり、監視カメラを使ったりするようにして、効率化しています。両親は夜に豚舎まで豚の様子を見に行っていましたが、自分たちは、夜は監視カメラで確認しています。

 

これからチャレンジしていきたいことは何ですか?

現在、飼料も高騰しています。そこで、飼料の自給率を高めたいと考えています。エサ全体の3割ほどを占めるトウモロコシは、かつてない価格になっています。国産トウモロコシを取り入れました。国産のトウモロコシ、飼料米を使う方向に転換していきたいと考えています。その場合、輸入の免税トウモロコシとは違って、消費税もかかり価格は上がってしまうので、国の政策にも期待したいです。

令和3年には、萩むつみ豚まんの販売を開始したほか、「6次産業化アワード農林水産大臣官房長賞」を受賞している有限会社小野養豚。

適量生産の循環型農業で、ブランド豚「萩むつみ豚」の生産から販売までの一貫経営に取り組んでいる小野養豚では、トンカツ、焼肉、しゃぶしゃぶ等、用途に応じた精肉のほか、萩むつみ豚まんや各種セットもご用意しています。
詳細は⇒買う/有限会社小野養豚 萩むつみ豚直売所をご覧ください。

★「萩むつみ豚」の情報については、

⇒萩の食材/萩むつみ豚をご覧ください。

 

萩のふるさと寄付

小野養豚の返礼品をチェック!

基本情報

会社名又は個人名 有限会社小野養豚
住所 〒758-0305 山口県萩市吉部下4704番地
電話番号 08388-6-0903
URL https://mutsumibuta.com/
販売場所 有限会社小野養豚 萩むつみ豚直売所 ほか

地図

Googleマップ

農林漁業就業情報